「ヨーロッパを8か月旅をした」というと、自由でいいよね、金があっっていいよねなど言われるので面倒くさいが、私なりに理由はあるので書いておく。
時間がないから行く

たしかに通勤しているサラリーマンではないけれど、仕事はあるし、べつに自由でもない。だからといって数十年後ダイレクトフライトに乗って、毎日ホテルやリゾートに泊まり、レストランでグルメを楽しみ、レンタカーや急行列車でヨーロッパを旅する自分を想像できない。いつまでも私は数か月じっくりローカルを巡るバックパッカーなのだと思う。
歳を理由にするのは大嫌いだが、正直しんどい。8か月間30㎏+食料もって転々としシェアルームを泊まり歩くのはつらい。荷物の中身、重さ。これがアジアを旅するのとはまるで違う点だ。ちなみに今回の旅の中で「(体力的に)遅すぎた…」と数えきれないほど思った。
もちろん金持ちなわけではない。本来は4年前の2020年に旅する予定をたてていたのだが、コロナで延期となり、混乱で治安も悪化したうえにロシア戦まで始まってしまう。では2023年にと思ったら円安が始まるので1年間落ち着くのを待ってみたらさらに悪化したので、待っても仕方ないと見切りをつけて2024年4月に出発した。ちなみにわたしの滞在中は170円/ユーロ、195円/ポンドという最悪のレートだった。
時間が有り余っているから行くのではなく、時間がないから行くのだ。こんなこと60歳で出来るわけがない。
行き先の勢い
旅先でも登山でも「ノリと勢い」というものが存在する。行く予定もなかったのに中国やミャンマーに入国しラオスに戻ってまた中国へ...その場で決めたノリの旅はたくさんある。
訪れている最中に次の行き先を決めていたり、来週は来年はとすでに頭の中でスケジュールをたてている。この勢いを強制的に止めたのがコロナであり、その待機中にそれまで気に留めていなかった場所や趣味に興味を持った人が世界中にいる。そうやって憧れの日本へ行くこと、暇な待機中に詳しくなったアニメの国へ行く計画が進んだ外国人がたくさんいる。
大雑把なプランはあったけれど、延期した4年間で関心の方向が変わった点もたくさんある。特にフランスへの興味が広がり、イングランドの関心が冷めていった。
イギリスでイギリス人を見たい

10代の頃からイギリスに興味があった。音楽、映画、叔母から聞くイングリッシュガーデンの話などベースはいろいろあるが、私の性格的にイギリス人の「会話」が好きなのだ。ステレオタイプで皮肉たっぷりの話、でも自虐的なイギリスユーモアが好き。ちなみにイギリスの観光地やロンドンという都市、自然には全く興味がない。味わったことはなかったが食事はもっと興味がない。
1年以上過ごしたニュージーランドや、マルタ共和国でも古い家屋で見かけるイギリスのクラシカルな道具や単語に魅了された。イギリス各地の知識や文化、歴史をユニークに語ってくれるのも好きだった。こういう会話って東南アジアでは成立しないんですよ。そして何と言っても優しい。
だからどの国よりも昔から好きなのに、ガイドブックを買ったり旅行者のブログを読んだり美しい景色の写真を眺めることもない。「イギリスの情報」には興味がなくて、ただただイギリス人の会話をカフェやパブで聞いてニヤニヤしていたかっただけなのかもしれない。
フランスの追い上げ
フランスは不思議な存在だった。嫌いではないが外国人が思う日本のように、憧れるけど高くて行けない国という存在で行ってみたい願望は強くなかった。
それでも自分が海外を旅していると辺鄙な場所でいつも出会うのはフランス人で、一緒に数日旅をしたり連絡を取り合って再会することもあった。そして私の経営する宿でもっとも多い客は圧倒的にフランス人で、オーストラリアやアメリカ人よりも親しくなるのはフランス人だった。感じること、社会への文句、他国を馬鹿にする冗談もいたって日本人と話しているのと同じだったし、何年たっても連絡をとっているのもほとんどフランス人。

なんとなく自分好みだろうというイギリス人と、実際に話して過ごして気楽なフランス人への信頼と興味。優しいが距離をおくような人見知りのようなイギリス人と、おせっかいなほど優しいフランス人がどんどん対照的な存在になり、今回の旅行のメインがいつの間にかフランスになってしまった。
人生の中でイギリス人と話したことはたくさんあるし、不快に思ったこともないけれど距離が縮まったことがないのが、今回イギリスを放浪するのに躊躇していた。
旅先の経験と、ゲストとの経験

私は小さな宿を経営して10年になる。たった4部屋をニュージーランドで得たホスピタリティやバックパッカー経験を元にホームステイとして運営している。
10年前に長野の過疎った町を訪れる外国人は少なく、みんな海外旅行が豊富で日本文化に強い関心がある旅人だった。ここ5年間はツーリストが多く、横柄で宿の説明もろくに読まない観光者ばかりになってしまった。
もちろんアジアを旅して知り合い、連絡を取り続けているヨーロッパ人もたくさんいる。そうやって関心のある国ルートができあがっていく。彼らと再会するのも目的の1つだ。
正直、この宿の経営は海外を旅行する・留学するよりも1日中外国人と英語で話しているし、あくまで「日本に興味のある外国人」と話しているのでずっと盛り上がるし質問も意見も絶えない。
より深く相手の国のこともわかるし、嬉しそうに説明してくれるし、お互いの国の比較もできる。そうやって積み上がった知識や印象でヨーロッパ行きがはっきりした。
今さら自然なんて興味ない

30か国をのんびり旅して、気に入れば何度も行き、国内でも自然中心の生活を送る私にとって山やビーチは海外へ行くほどでもなく、都市は東京が1番好き。今回10年ぶりの先進国でもっとも見たかったものは人と社会だった。そんなふわっとした探求心がベースとなっている。
というもろもろの理由を組み合わせて「人」の印象がいい
オランダ、ベルギー、フランス、スイス、イギリス、スコットランド+スペイン という西ヨーロッパ7か国となった。
スペイン人と知り合ったことはないが、スペイン巡礼(camino de compostela)のため訪れた。
東・中央ヨーロッパはまた今度ということで。
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